■税が払えない人はいったいどうなるの?
他府県に逃げる・山にこもる・貴族の私有地で雇われる・浮浪者になる・強盗になる…のいずれかがほとんどでした。こうして税を払う人がどんどん減り、税収が落ち、国のおサイフが…大がピンチに!
そこで道真公がとった策は?
なんと「厳しく取り締まる」の逆!
人々から相談を受けて現地の実態を調べる役人「問民苦使(もんみんくし)」を設置、現場の実態に合わせた税の取り方をします。
カンペキな現場主義。
中央の役人ならおそらく想像もつかないようなやり方。こういうところが地味に、すごい。
■当時の日本は男子が10人に1人しかいなかった?!
当時は唐のマネで、男(=働き手)に課税していました。
人々は税を逃れるため子どもが生まれたら役所に「全員女の子~!」で届け。 だから当時の戸籍を見ると「女」の文字がずら~~~っ! 男は10人に1人(戸籍上)。
ますます税がとれない!
そこで道真公は土地に対して課税しようとします。
でも実はこれ...戸籍ゴマカシ対策がメインではありませんでした。
地方の金持ちは畑を新たに開墾したら国有地なので課税されてしまいます。そこで免税されている特権階級の貴族に形だけ寄進し、名義料を払って実質自分の土地にして儲けていたのですね。ズル!
■既得権益にメスをいれた道真公の改革
こうしてどんどん課税できる土地が減り、特権階級と地方の金持ちだけが大きく儲けました。これぞ官民癒着(現代みたい!)
道真公は全国を徹底的に調査、膨らんだ貴族の私有地を解体、庶民に分配し確実に税が入るようにしました。
道真公は触れてはならない特権階級の「既得権益」にメスを入れたのです!
私が「道真公すごい」と心底思うのは、現場の目線で仕事のオペレーションを組み立てることに徹底していた点です。そしてありえないくらい考え方が柔軟。
歴史上の人なら「天下統一」とか「偉大な発見」みたいなわかりやすい実績があると尊敬されやすいのですが、道真公の場合はそこがものすごく地味。 だから話を面白くするために「藤原時平との確執」や「怨霊伝説」の部分を面白おかしく脚色してクローズアップされてきたのかもしれません。
■現場目線のオペレーション第一に考えた道真公
道真公はエリート官僚で学者であるにもかかわらず最下層の現場オペレーションにまで見通して徹底的にこだわっています。
「学問の神」である道真公は単なる伝説ではなく、本当の本当に頭のいい人だったんだなあと思います。
「地味だけどすごい」例として、国司(県知事みたいなもん)の決算報告を廃止したこと。
当時の書類を見ると、改革以降の決算報告が空欄になっています。
国の決算報告を廃止するなんて常識はずれもいいところですが、現場だけにしかわからないハッキリした根拠がありました。
ひとつは、煩雑な決算チェック。
この仕事に中央の役人が忙殺され、中央の仕事が滞ります。チェックされる側の国司の仕事も滞る。
現代でいうと…支店に監査、お店に税務調査が入った状態、と考えれば近いのかな?
まさにあれです。調べる側もたいへんだけど、取り調べを受ける側は終わるまで仕事にならんわけです。
もちろん調べる側も対応する側も、その分人件費もかかります。
それまでは決算報告させて余剰の利益が出たらそこにも課税していました。
でも報告をなくしたので、国司は余剰利益を不測の事態(天災や不作の年など)のために備蓄することができるようになったのです。 もちろんそれで私腹をこやす国司もいたでしょうがトータルで見ると小さいことだと判断したのですね。
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